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米国の医療保健改革

 米国の医療保険制度は日本のような国民皆保険制度をとっておらず、社会保障制度としての公的医療保険は、基本的には65歳以上の高齢者向けの「メディケア」、低所得層を対象とした「メディケイド」、軍人向けのもの、などに限られています。

 民間の保険会社が提供する保険プランには、いろいろのものがありますが、大別するとFFS(Fee For Service)とマネジドケア〔HMO(Health
Maintenance Organization)、PPO(Preferred Provider Organization)、
IPA(Independent Physician Association)、POS(Point of Service)〕の2つに大別されますが、近年はFFSへの加入者が減少し、保険料の安いコスト抑制型プランのマネジドケアへの加入者が急増しています。

 マネジドケアは、あらかじめ医師や病院と標準的な医療費用の幅を設定しておき、指定医や指定ネットワーク(医師・病院の集まり)を利用することにより、比較的低額の医療コストで効率の良い医療サービスを行うことを目的にしたものです。HMOでは一人の指定医しか利用できないのに対して、PPOプランはnon-networkで、基本的にどの医師や病院も利用できます。

 現在のところ、国民の約3分の2は民間の私的医療保険に加入していますが、15%にあたる約4700万人が無保険者です。民間保険加入者の約9割は勤務先を経由して加入しているため、失業した場合には無保険者となってしまうなどの弊害が出ています。

 私的な保険は、当然、資格審査や掛け金の面で貧困者には厳しいものとなります。そのため、私的保険に入ることのできない高齢者や貧困層は、メディケアやメディケイドの適用範囲が狭いため、病気になれば明日をもしれぬ生活を強いられることになります。

 公定診療費も設定されておらず、経済協力開発機構(OECD)の統計によりますと、1人当たり年間医療費は2007年に7290ドル(日本は06年に
2581ドル)と高額で、国民医療費の国内総生産(GDP)比も16%(同8.1%)と高く、財政を圧迫しています。

 米国では糖尿病や循環器系疾患など慢性疾患の罹患率が上昇し、肥満者に対する医療費は、正常体重者に比べ600ドルから1,600ドルも高くなっています。2011年までにベビーブーム世代がメディケア対象年齢に達し、多数の高齢者を抱えます。この世代の医療費は、2008年の12%から、2010年までにはGDPの20%を占めると予想されます。

 マイケル・ムーア監督の作製した「米国医療残酷物語」映画『シッコ Sicko』にもでてきますように、米国の治療単価も非常に高いようです。診療
報酬制度が自由裁量の認められる出来高払い制であり、高額な薬剤の使用と新しい医療機器、診断法などの導入が米国の医療費を著しく上昇させ、主要7か国中で最も高額といわれています。

 オバマ大統領は、何百万人もの国民に無保険の苦しみを味わわせているのは先進国では米国だけだとし、選挙公約で、米国民全員に質が高く、手ごろな「ポータブル」健康保険を提供する事実上の国民皆保険を約束しています。

 オバマ大統領の基本目標は、医療保険の既加入者には安心と安定を与え、無保険者には手ごろな保険を提供し、家庭、企業、政府の医療費の増加を鈍らせることにあるといわれています。

 改革の主眼は、無保険者に保険を提供することで、公的保険導入は手段の一つにすぎず、究極の目標を達成するためには他の選択肢も排除しないとしています。例えば、協同組合や非営利組織の設立や、個人や中小企業が医療保険に低価格で加入できるような新たな保険市場の創設なども案として視野にいれているようです。

 しかし、米国では欧州型の福祉国家に反対する保守派の考え方は非常に根強く、クリントン政権時代にも医療保険改革は試みられましたが、議会や業界との調整不足から頓挫しています。オバマ大統領も、新たな公的保険制度の導入が民間企業を圧迫し、肥大化した公的保険は財政を圧迫する、との強い反対勢力に抗していかなければなりません。

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