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 蝉は、あまり暑いと鳴かないと言います。本来、真昼の暑い時間帯に鳴く蝉は少なく、木陰のあるところや比較的涼しい朝夕の時間帯に多くの種類の鳴き声が聞かれるのですが、今年は朝晩も気温が高く、この近辺では例年よりも蝉の鳴き声を聞く機会が減っているように思います。

 蝉は何年も土の中で過ごし、地上で過ごす期間はごくわずか。そのわずかな期間を精一杯生きるかかのように狂おしいほど鳴き続けます。そのような蝉を人間の生まれ変わりとする伝承が数多く残っているそうです。

 蝉の抜け殻を「空蝉(うつせみ)」と呼びますが、もともとはこの世に現に生きている人という意の「現身(うつしおみ)」が語源で、現世という意味も持ちます。

 空蝉という言葉は、樋口一葉の短編や源氏物語の表題にも使われ、万葉集などでの「うつせみ」は「人」や「世」にかかる枕言葉です。蝉の儚さ、空蝉のすぐに壊れてしまいそうな脆さや危うさは、まさに「人」であり「世」であるような気がします。
 
 ちなみに源氏物語に登場する空蝉は作者である紫式部自身がモデルではないかと言われています。たった一度だけ肌を合わせたものの、その後は拒絶を続けた空蝉は、光源氏にとって生涯忘れることのできない女性として描かれています。

 また、一葉は「とにかくに越えてをみまし 空蝉の 世渡る橋や夢の浮橋」と詠み、儚い世の中なれどとにかく生きていこうとの思いを歌にしています。

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