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江戸の悪口事情

 江戸の庶民がよく「べらぼうめ」と啖呵をきる「ぺらぼう」ですが、説が二つあります。一つは、お前なんか、箸にも棒にもかからない、穀潰しの「箆(ヘラ)の棒」の様な野郎だと言う「ヘラ棒」がなまったと言う説と、二つ目は、寛文年間 (1661~73)に、便乱坊(ぺんらぼう)と言う見せ物がありました。これは、 全身に黒い毛が生えて、頭がとがり目は赤く丸く、あごは猿のような、猿だか人間だか分からない生き物で、「べんらぼう」がなまったと言う説です。 江戸では、悪口の他に、「とてつもない」と言う様な意味でも使われ、「今年の初鰹は、べらぼうに高いぜ」などの言い方もあります。

 以下、五十音順に、江戸の悪口についてご説明します。

●あこぎ 伊勢に阿漕ヶ浦(あこぎがうら)と言う禁漁区がありました。禁漁区ですから、掟をやぶって、そこで漁をすれば、大量の獲物を収穫できるところから、欲の限度の無いやつ、厚かましいやつを指します。
●浅葱裏(浅黄裏)田舎侍の事です。
●天の邪鬼 あまのじゃく、あまんじゃくと言う、人と反対の事をする小鬼で、ここから、わざと他人に逆らう人を指します。
●芋っ掘り いもっぽり、江戸人は巻き舌で「もっぽり」に近い発音をしていたようです。要するに、畑で芋でも掘っているような、「この田舎者め」と言う意味になります。
●うんつく 「運尽く」と書きます。運も根も尽き果てた、知恵の足りない者を卑しめていう言葉です。
●お引きずり 裾を引きずる様な、女性の長い着物は上流階級の方々の衣装ですが、庶民の女性がこれを真似ると、単にだらしない女性と言う事になります。
●株っ囓り 江戸は株仲間と言う、商工業者が幕府の認可を得て結成した同業組合がありました。ここから、他人の株をかじると言うのは、人まねしかできない人を指します。
●かんちょうらい 「寒頂来」と書きます。寒さのピーク(頂き)が来たような、寒々とした、人も寄り付かない愚か者、と言うような感じでしょうか。 
●腰巾着 手下や子分でもないのに、その人からおこぼれをもらおうと、付いて回る、調子の良いヤツを指します。
●すっとこどっこい 「素男何処行(すおとこどこい)」がなまったものです。素男とは着物を着ていない素っ裸の男。何処行は、どこへ行く、と言う意味で、「裸でどこへ行くんだ?この馬鹿。もっと落ち着けよ、礼儀知らずめ」と言うような意味になります。
●たわけ 農家で田んぼを相続させる時に、複数いる子供たちに、どんどん 分けて行くと、田んぼが小さくなっていき、農業が成立しなくなってしまうところから、先見の明がない愚か者を指します。
●ちんけいとう 「珍毛唐」と書きます。「毛唐」とは、江戸期に外国人を指して言う差別用語で、更に頭に「珍」をつけて、取るに足らないヤツを指します。ちなみに、博打のオイチョウカブで、二番目に悪い数字(イチ)を「ちんけ」と言いますが、ちんけいとうから出た言葉です。
●月夜の蟹 カニは月夜に産卵して身がすかすかになるところから、見かけ倒しで、中身が無い事を指します。
●頓珍漢(とんちんかん) 鍛冶屋の親方が弟子といっしょに、とんかんとんかんと槌(つち)を打つ事を、相槌と言いますが、そのリズムが揃わないと上手くいかないところから、かみ合わない事、的はずれなヤツを指します。
●鼠舞(ねずみまい) ネズミが踊りを踊っているがごとく、巣穴から出たり入ったりする様から、優柔不断な事を指します。
●のろま 野呂松または鈍間と書きます。寛文十年(1670)頃、人形浄瑠璃の野呂松勘兵衛がつかい始めた、野呂松人形と言う、青黒い変な顔をした道化人形がありました。これから、ボケッとした、変な顔のヤツをのろまと呼びます。
●ばか 莫迦とも書きます。梵語で無知を意味するmoha(慕何)の転。元々は僧侶の隠語で、「馬鹿」は当て字です。
●ばくれん 莫連と書きます。欲が深く、性格の悪い女性を指します。
●ばけべそ 長屋住まいの庶民が、自分のおかみさん連中を指して、影で言う言葉です。うちのおかみさんの顔は、まるで化け物がべそをかいた様な顔だと・・・
●半可通 しったかぶりをするだけで、物の本質を見極めていないヤツです。
●ほうすけ 「呆助」と書きます。要するに「阿呆」の事です。                   
●左前 死者には、相手から見て左の襟が前に来る様に、着物を着せるところから、商売が上手くいかない状態を指します。
●冷や飯食い 武家や大店の次男坊以下を指します。江戸は男尊女卑ならぬ、嫡尊弟卑で、次男以下は家督を継ぐ事は出来ません。そのため、家長の後で、冷えた飯を食べることろから、こう呼ばれました。厄介者、部屋住とも呼びます。
●兵六玉・表六玉 ひょろひょろして、ドン臭く、何も出来ない男を指します。
●昼行灯 昼に行灯を灯しても、油を使うだけで、何の役にも立たないところから、飯だけ食ってる怠け者、ぼけーっとした男を指します。
●無頼漢 ならず者、ごろつきを指します。
●幣衣蓬髪 へいいほうはつ、と読みます。髪は蓬(よもぎ)の様に乱れ、着物はボロボロの、落ちぶれた武士を指します。
●ぼんくら 丁半博打(盆茣蓙博打)で、壺振り(中盆と呼びます)役の人が丁への掛け金と、半への掛け金を瞬時に計算して、壺を振ります。この計算が遅いと、盆が暗いと言い、総じて、頭の回転が遅い、ドンくさいヤツの事を、ボンクラと呼ぶようになりました。
●丸太ん棒 目も耳も無い(状況を読まないし、人の話しも聞かない)、人情の無いヤツと言う意味です。
●やくざ 博打の「オイチョウカブ」から出た言葉です。オイチョウカブは、花札を引いて、引いた手札の数を加算して、その下一桁の大小で勝負を争うもので、一番弱いゼロをブタ、順に、一をチンケ、二をニゾウ、三をサンケン、四をヨツヤ、五をゴケ、六をロッポウ、七をシチケン、八をオイチョウ、一番強い九をカブと呼びます。手札で、八と九と三の三枚を引くと、合計して二十、つまり下一桁はゼロで、一番弱い手札です。役に立たない、どうしょうもない「八九三」の手札を「八(や)九(く)三(ざ)」と呼びます。 ここから、どうしようもない役立たずの人間を「やくざ」と呼ぶようになり ました。
●宿六 もともとは宿屋の亭主を指しましたが、宿屋は女将が管理するものでその亭主はたいした仕事をしていない様に見えるところから、立場の無い亭主、甲斐性なしを指します。
●埒が明かない 埒(らち)とは、馬場を囲む柵の事で、それが開かないと外へ出られない事から、物事が進展しない、解決しない状況を指し、さらに、秩序が無い事、取るに足らない事を、埒も無い、と言います。

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