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医療紛争を起こさないために

 最近の医療紛争増加の患者側の背景因子として、患者の権利意識の高まり、メディアの強い影響力、患者・家族の医療への期待過剰、紛争に介入して利益を得ようとする人、親戚の煽動、などがあげられます。

 医師側にも医療紛争の火種になる背景因子として、後医の前医に対する不用意な批判的発言、インフォームド・コンセントの不足、医療従事者の不信感を生じさせる態度、などがあげられます。

 そこで、医療紛争を起こさないために,上にあげた背景を念頭に置き、どのようにすればよいかを考えてみたいと思います。

  
 まず、紛争の根幹をなす患者の誤解にどのようなものがあるかについてみてみます。診療は医師のみでおこなえるものではなく、患者の協力がなければ医師は診療目的を達成できません。すなわち、医療は患者との共同作業であるという認識が欠如していると、医師には病気を治す義務がある、病院に行けば病気は治る、専門医が診れば病気の原因が必ず分かる,などと一方的な考えを持つようになります。

 医療というものは、常にリスクを内在させているもので、常に良い結果を保証することの出来ないサービス業であります。したがって、医療にあっは、医師と患者が信頼関係に基づき、そのリスクを共有しなければなりません。

 不幸なことですが、家族に何か予想外のことが起こると、まず医療従事者が何かミスをしたのではないかと疑う傾向がみられます。予想外の出来事が本当に予想できないことなのか、あるいは元々の病気のためだから仕方がないことなのか、医療側と患者側の医学知識のギャップを埋めるのが困難なことが多いのも事実です。

 ここではっきりさせておかなければいけないことは、「医療事故」というのは医療に関連して生じた予想外の事故であるのに対し、「医療過誤」は過失によって生じた医療事故で、この両者を混同しないことが大切です。患者側からすれば、医療事故が予想外に起こったものか、過失によるものかの区別が付かない場合には紛争の元になります。

 医療への信頼が揺らぐと、医療の不可視性への疑念をもたれ、説明への過剰な必要性を生じます。そこで、いよいよコミュニケーションと対話により医療側と患者側の信頼関係の構築が必要となってきます。

 医療紛争がどのように解決されているかを段階的にみてみますと、院内事故調査委員会と院内メディエーターによる解決、次いで医療裁判外紛争解決(ADR),それで解決しない時には裁判に持ち込まれます。

 最近の医療紛争の状況を見てみますと、100件の医療紛争のうち、裁判に持ち込まれる医療訴訟が10件、そして患者側が勝訴するのが1件といわれています。

 裁判は対立を前提としているため、対話を阻害してしまいます。裁判は対立をエスカレートさせるだけで、例え勝訴しても勝利と解決は違います。「法」と「医」の壁が存在するため、長い処理期間と高額な訴訟費用を必要とします。

 患者の求める主な願いは、痛みへの共感、補償提供(金銭提供)、真実が知りたい(情報開示)、謝罪してほしい、誠意を示してほしい、二度と事故が起こらないように(再発防止への取り組み),であります。

 訴訟が医療現場へもたらすものは、インフォームド・コンセントの空洞化、訴訟回避のための萎縮医療をもたらし、医療側の防御的対応が患者の疑念をエスカレートさせ、リスク・マネジメントへの努力を無意味なものにします。

 対話型ARDでは、真実を知りたい、向き合って誠意ある対応をしてほしい、二度と事故が起こらないようにしてほしい、とった患者の願いを実現する近道といえます。

 患者・家族は病気や医療についての系統だった知識がなく、自分の身に降りかかっている病気が今後どのように変わっていくのかが大きな恐怖であり、医師は最初の段階で、このギャップをしっかりと説明して埋めておくことが紛争を予防するためにも非常に重要です。

 医療紛争に対しては、医療側が「逃げない」、「隠さない」、「ごまかさない」を基本的姿勢とし、対話による解決が行われることが望まれます。

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