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大晦日をテーマにした江戸川柳

 「大晦日」をテーマにした、江戸川柳を色々とご紹介したいと思います。「押し入れで息を殺して大晦日」「大晦日もうこれまでと首括り」なんて川柳を二つ上げましたが他にも有名所では。

 「大晦日箱提灯は怖くなし」。箱提灯は普通武士が持って歩く物。逆らうと無礼うちに遭う侍は、怖い存在ですが、大晦日だけは、借金取りの持ち歩く弓張り提灯の方が怖い。「大晦日箱提灯はのろい様」なんてのもあります。

 侍が箱提灯を持って歩いていますが、借金取りに駆け回る掛取りの持つ弓張り提灯に比べると、ゆっくり歩いている様に見えます。「大晦日ますます怖い顔になり」。借金をどう返済しようか、思案をしている。怖い顔がますます怖くなると言う。それなら、借金取りをにらみ返したらよさそうなものですが、そうもいかない様で。「大晦日とうとう猫は蹴とばされ」。怖い顔のまま、猫に八つ当たり。猫の方こそ良い災難です。

 「大晦日今はへそくりあてにする」。おかみさんがへそくり出来るくらいの稼ぎがあれば、大晦日に困ったりしません。仕方なく、前フリの川柳の様に押し入れで息を殺して居留守を使い、借金取りが帰るのを待つばかり。

「大晦日首でも取って来る気なり」。借金取りの方でも、意気込んで出かけるのですが、お金が無い事にはしょうがありません、仕方ない「大晦日首でよければやる気なり」なんて、開き直られたりして。「元日や今年も来るぞ大晦日」。元日から大晦日の心配をしていれば、暮れにまごつく事もないのでしょうが、なかなかそうは行かない様です。

 「大晦日いじかりまたのたのもしさ」。にらみ返しではなく、いじかりまた(股をひろげ足をまげて歩くさま)で借金取りを追い返す頼もしい亭主。「大晦日鏡見ていてしかられる」。鏡なんか見てる場合か、借金の言訳を考えろ、おかみさんは亭主に小言を言われてしまいました。

 「大晦日肝にこたえる頼みましょ」。頼みましょうの声。ああ、また借金取りが来たかと、肝を冷やしてます。「大晦日ここを仕切ってこうせめて」。取る方も取られる方も、色々な作戦を練ります。

 「大晦日心苦もなく妾弾き」。借金に縁のないお妾さんは、気楽なもので、三味線など弾いていい気なモンですね。「大晦日世間へ義理で碁を休み」。こちらも借金に縁のない、大家のご隠伽さんでしょうか。「大晦日旅立ほどのいとまごい」。亭主は必至の覚悟。おかみさんにいとまごいまでして、お金の算段に出かけます。

 「大晦日手を組んでいるすまぬ事」。手を組んでる場合じゃありません。借金を何とかしないと。「大晦日女房が言うと黙りおれ」。お前さん、大晦日だよ、借金どうする気だい?うるせぇ、黙ってろい、俺にも考えがある、ってどんな考え?「大晦日火鉢とともにしかんでる」。お金は無し、金策も出来ず、獅噛火鉢(しがみひばち=金属製のつばの広い円火鉢で、脚や把手が獅噛の意匠になっているもの)の脇で、顰んだ(しかむ=額・顔の皮がちぢんでしわがよる)顔で座ってます。「大晦日名作ものできりはらい」。こちらは貧乏浪人でしょうか。度々催促に来る小うるさい借金取りなと、家宝の名刀で斬り掃ってしまいたいのですが、そうもいかず、止む無く家宝の名刀を切り売り、そのお金で借金を払うしかない様で。

 クレジットカードでお支払いが出来る、便利な現代ですが、自分の口座に持っている金額を忘れて、どんどん買い物をして、支払いが追い付かなくなり、終いにはカード破産なんて。これが現代の借金攻防戦なのでしょうか。どうしても払えなければ、最終的に「春まで待つから、その時必ず払うんだぞ。」と猶予してくれる、江戸の借金攻防戦の方が、のんびりしてて、人に優しい様な気がします。催促される当人は、そんな悠長な事言ってられないでしょうけど。

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