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ネイサンの逆売り

 現在は、相場の状況などはパソコンの画面で瞬時に確認できるようになりま
したが、江戸時代の頃は旗振りが情報伝達の手段として使われていました。

 

 当時は経済の基盤がお米であり、各地に米の取引所がありました。米相場の
中心地は堂島(大阪)で、米商人達は堂島の動向をいち早く掴むことで利ザヤ
を稼いでいたようです。

 

 そうした商人達の需要に応えるように発展したのが「旗振り通信」で、大阪
の堂島から和歌山まで3分、広島まで40分で情報が伝わっていたそうです。
堂島の相場の前場と後場の引け値を伝えるため西は九州、東は江戸まで旗振り
通信網が整備されていたと言います。

 

 相場において情報を持つ者と待たざる者の格差というのは、昔は今以上でし
た。

 

 情報を持たざる人は、情報を持っていると思われる人の動きに追従しがちで
す。やがてその動きは、事の真実は二の次となり、勝手に拡大・増勢されてい
くというのが相場の一つの側面です。

 

 投資に関して素早い情報収集が巨万の富を生んだという話では、ロスチャイ
ルドの例が有名です。

 

 ちなみにこの話の主人公ネイサン・ロスチャイルドはフランクフルトに両替
商を開いたマイヤー・アムシェル・バウワーの三男で、フランクフルト市の紋
章を模した赤い盾の看板を挙げていたことからロスチャイルド(独語で赤い盾
を意味するロートシルトの英語読み)と名乗るようになりました。

 

 時は1815年、ナポレオン率いる仏軍と英軍がワーテルローにて対峙。英
軍がこの戦いに敗れるようなことがあれば英国の利権は一気に縮小することに
なります。膨大な戦費を公債で賄っていた英国では、ワーテルローの戦い直前
の交戦ですでに英軍が負けていたこともあり、公債相場が下落を始めていまし
た。もしワーテルローの戦いで英国が負ければ、公債相場は暴落必至という状
況です。

 

 戦いの結果しだいで公債相場が急騰あるいは急落する可能性があるため、
投資家達は事の成り行きを注目していました。ただ、当時は情報伝達網が整備
されていなかったため正確な情報が伝わるまで数日を要しました。そこで投資
家達が注目したのが、独自の通信網を持ちすでに投資家として有名になってい
たネイサンの動向です。

 

 ワーテルローの戦いは、ウェリントン公率いる英軍の勝利に終わりました。
自身のネットーワークを使い、ウェリントン公の急便より数日前にその情報を
手にしたのがネイサンでした。その時点では英軍勝利の情報を知るのはネイサ
ンただ一人。しかし、ネイサンが市場で出した指示は公債の売りでした。

 

 その動きを見ていた他の投資家達は英軍が敗北したと思いこみ一切に投げ売
りに走ります。暴落の中、冷静に市場を観察していたネイサンは一転して怒涛
のごとく買いに回ります。暴落の翌日、英軍勝利の情報がもたらされると今度
は一転して買いが殺到、相場は大暴騰です。

 

 この取引でネイサンは天文学的な巨富を得、後に「世界の富の半分を所有し
ている」と言われたロスチャイルド家の礎になったとされています。

 

 

 

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