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ゴールドラッシュ 

 雪よ岩よ、われらが宿り♪で始まる「雪山讃歌」は、山男の自由で意気揚々
とした感じが伝わってくる歌で、この詩は理学博士で登山家、後に第一次南極
観測越冬隊隊長となった西堀栄三郎氏が若い頃に書いたものだそうです。

 

 雪山讃歌の元歌となった「愛しのクレメンタイン」は切なく、哀愁のある歌
で、映画「荒野の決闘」の主題歌となったことで日本でも広く知られるように
なりました。

 

 「愛しのクレメンタイン」に登場するフォーティーナイナー(49年者)は
アメフトのチーム名にもなっていますが、川から金が発見された翌年の184
9年に大勢の人々がカリフォルニアに殺到したことに由来しています。

 

 「ゴールドラッシュ」という言葉は、わずかな元手で成功をつかむ、夢を追
い続ける、あるいは可能性に賭け大勢の人がやってくるというような比喩とし
て今も使われています。

 

 しかし、今から170年ほど前に起こった実際のゴールドラッシュで、金を
掘り当て大金持ちになったという例は少なかったようです。

 

 実際にカリフォルニアにあふれていたのは、金ではなく、金を掘り当てよう
とやってきた人だったと言われますが、ゴールドラッシュでは数少ないながら
も次のような成功例があります。

 

 最初の成功者はブラナンという人物でした。彼は金発見のニュースをいち早
く入手した際、金を掘りに行かずにまずシャベルや斧といった採掘道具やテン
トなど生活用具の買占めに動き、それが完了したところで、金が見つかったこ
とをふれ回りました。かくして、殺到する山師達にシャベルなどの用具や生活
用品を独占販売して大儲けしたそうです。

 

 リーバイスは丈夫なズボンを提供し大成功し、ヘンリー・ウェルズとウィリ
アム・ファーゴは交通手段や通信手段がなかったカリフォルニアで馬車便を運
営し大当たりしました。西部劇によく登場する6頭立てのあの駅馬車です。

 

 「Wells Fargo」の名が刻まれたその駅馬車はやがて貴金属や金
銭なども運ぶようになり、そのうち銀行を設立、それが現在の米銀大手ウェル
ズ・ファーゴで、小切手業務が後のアメリカン・エキスプレスです。

 

 また、鉱夫相手の雑貨商で財を成したスタンフォードは、大陸横断鉄道の一
つセントラル・パシフィック鉄道を設立し、億万長者になります。ちなみに、
誰もが知っている「線路はつづくよどこまでも」という歌は、もともとは大陸
横断鉄道の工事現場で働く工夫達の様子を歌った歌です。

 

 スタンフォードは大陸横断鉄道で得た富でカリフォルニアに1000万坪近
い広大な大学を設立します。後にその辺り一帯はシリコンバレーと呼ばれるよ
うになり、ゴールドラッシュの再来のように多くの若者を惹きつけました。

 

 ゴールドラッシュの物語で非常に興味深いのは、金を掘らずに金を掘りにや
って来た人々に便利なモノ、そこでやっていくために必要なモノやサービスを
独占的に提供した者達が大成功を収めたという事実です。

 

 

 

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