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2022年3月

「新感覚の二刀流タイプ」

 今は入社式のシーズンで、今週金曜日の4月1日には多くの企業で新入社員
を迎える式典が行われます。

 

 ところで、人事労務分野の民間シンクタンクの産労総合研究所は、その年の
新入社員のタイプを時代を象徴する言葉で表していますが、今年の新入社員の
特徴については「新感覚の二刀流タイプ」と表現しました。

 

 同研究所は今年の新入社員について

 

『インターンシップや就職活動を、対面とオンラインの2つのスタイルで二刀
 流のようにこなして、入社式を迎えた。しかし、就活中に職場の雰囲気や仕
 事に関する情報が得にくかったこともあり、入社後は、思い描いていたイメ
 ージと実際とのギャップにとまどいそうだ』

 

 と分析し、先輩社員に対しては

 

『これまでの新入社員とは異なる新感覚(オンライン慣れ、対面コミュニケー
 ションの不慣れ、配属・勤務地へのこだわり、SDGsへの興味、タイムパ
 フォーマンス志向等)や未熟にみえる言動を受け止めたうえで温かく交流し、
 1人ひとりをみつめた育成支援をしてほしい』

 

 とアドバイス。

 

『そうすれば、才能が開花し、環境変化にも適応できる「リアル二刀流」にな
 っていくだろう』と結んでいます。

 

 

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失 言

 米バイデン大統領が、プーチンに関する自らの発言の火消しに躍起とのこと。バイデン大統領は、今は本当に忙しくて、責任も重大だし、多くの判断も、交渉も、発信もしなければいけないと思うので、間違えることはあるとは思うのですが、東西を問わず、政治家が何かを云って炎上すると、大概みな、それはそのような意図で云ったものではない、という云い訳をするのが、私には気になります。

 思ってなければ口に出ない筈で、でも思っていたことがずれていたことはあり得るので、それなら考えがずれていました、すいません、考えを改めます、と云えばいいのに、と思うのですが、どうしてみなこうなるのでしょう?民間の経営者がこんな云い訳をしても、受け入れてくれることは先ずありません。言葉は大切にしたいですね。

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 「思い出す、様々のことさくらかな」と芭蕉の句にありますが、街中で咲く
桜にふと見入り、在りし日の「母の姿」を思い出します。
 桜の季節は別れと出会いの人生の岐路となりますが、桜はいにしえより貧富
貴賤(ひんぷきせん)の差はなく、等しく公平に美の喜びを与え続け、それぞ
れの思い出と重なり合います。やはり、日本人の心に宿す花といえば桜かもし
れません。
 日曜日に全国トップをきって福岡で桜(ソメイヨシノ)が満開となりました
が、今週は全国的に満開ラッシュとなります。

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江戸の長屋事情

 江戸川柳『箸と椀持って来やれと壁をぶち』。長屋住まいの気のいいご亭主が「今日は雨だったから、
隣の独り者は、仕事にあぶれて、夕飯が食えないだろう」なんて気をまわし
て、壁をトントンと叩きます。すると、隣の独り者、毎度の事で「やった!
今日も夕飯はご相伴にあずかれる」と、マイ箸とマイ茶碗を持参でノコノコ
やって来て、夕ご飯をご馳走になる。そんな風景を詠んだものです。
 江戸時代の長屋は、「夕ご飯のおかずの差し入れ」ばかりではなく、自宅に招いて夕飯をご馳走してあげる、
そんな事が当たり前に行われていました。夏はどの家も開けっ放しですから、家の中は丸
見えですが、別に覗くヤツもおりませんし、誰もが気にもとめません。親が
留守の子供が、近所でご飯を食べさせてもらうのも、日常茶飯事。ちょっと
した物の貸し借りは当たり前。壁越しに「ちょいとおミツさん、切らしちゃ
たから、お醤油貸して」と叫べば、隣のおカミさんが、ヒョイヒョイとお醤
油持ってやって来てくれます。
 長屋に体の不自由な一人者のお年寄りでもいれば、長屋のおカミさんが、
ローテーションで、三度三度のご飯を持って行きます。お互いに家の中の事
はお見通しなのですが、それでいて、無用なおせっかいという事はしません。
必要な時は助け合いますが、それ以外の時は、自分たちの事で精一杯ですか
ら、暇を持て余すなんて事もありません。親戚よりも身近に身を寄せて暮ら
し、お互いの家の事情はそれとなく分かっていますから、必要とあればお互
いに助け合い、必要がなければ干渉しない。それが江戸の長屋でした。
 江戸の長屋の暮らしは、夜が明けると、治安のために夜は閉められていた
木戸が開きます。目が覚めると、住人は雪隠(おトイレ)へ行きます。長屋
には必ず共同便所が二つ、三つ並んでいます。朝はみんなが列を作って順番
待ち・・・と思うのは現代人。江戸時代のしゃがんで入る個室のトイレは、
扉の上半分が開いていて、中に人が入っていれば、頭が見えます。遠くから
でも分かりますので、自分の家の玄関からトイレを見て、空いた時を狙って
駆けつければOKです。
 用を足したら、現在の歯ブラシにあたる「房楊枝(ふさようじ)」という、
割りばしほどの長さの木の先端を煮て割いて房状にしたもので歯を磨き、顔
を洗います。水道は無いので、長屋に一つある共同井戸から桶で水を汲んで、
自分の家の水がめに貯めてある水を使います。朝食は、ご飯さえ炊いておけ
ば、後は自宅の前のせまい路地へ、いろいろな手商人が天秤棒で品物を担っ
て売りに来ますので、納豆や漬物や豆腐、浅利にシジミにハマグリなど、適
当に見繕って、朝食の出来上がりです。それを食べて、五つ(午前八時頃)
には、大工など出職のご主人は出勤します。
 お昼ご飯も長屋を訪れる手商人から購入して作り、ついでに、夕食のおか
ずも調達しておきます。長屋住まいの連中は、買い物に出かけなくても良い
ので、高齢者にも優しい社会です。お魚を購入すれば、魚屋さんがその場で
さばいてくれますので、アラなどの生ごみは発生しません。買い物客は、自
宅からお皿や鍋を持参して、買いに来ますので、包装紙もビニールパックも
発泡スチロールのトレーも不要です。
 現代は、商店街が寂れてしまい、郊外の大型スーパーでしか食料品が調達
できなくなり、車を運転しないお年寄りが「買い物難民」と呼ばれる不便な
時代です。燃えるゴミ、燃えないゴミ、プラスチックゴミ、危険ゴミ、リサ
イクルゴミなどと、細かに分類しないと、ゴミも捨てられません。
 江戸の長屋の住人の使う着物や紙は再利用と再生に使われ、下肥や灰は肥
料になって土に戻り、再び食べ物となって戻って来た・・・現代人のように
「SDGs=Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」なん
て叫んで、必死に取り組まなくても、江戸時代の方がはるかに便利で、地球
環境にも優しい面が多々あったのです。
(なんか、夕食のおかずの融通の話から、最後は話が飛躍しすぎちゃった)

 

 

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世界各国の経済規模

 アフガニスタンやイランで戦った米軍の死者数は20年間で6636人だそ
うです。

 

 ウクライナに侵攻したロシア軍の死者数については西側が軍を派遣していな
いため実数を掴めていませんが、侵攻1カ月で7千人から1万5千人の範囲と
推計されています。

 

 ところで、国際通貨基金(IMF)によれば2021年の世界各国の経済規
模(GDP)上位は下記のようになっています。

 

  1位 米国 22兆6753億ドル
  2位 中国 16兆6423億ドル
  3位 日本  5兆3781億ドル
  4位 ドイツ 4兆3193億ドル

 

 米国と中国の経済規模はまさにケタ違いで、5位イギリス、6位インド、7
位フランス、8位イタリア、9位カナダ、10位韓国と続きます。

 

 11位のロシアの経済規模は米国の13分の1以下の1兆7107億ドルで、
米カリフォルニア州や米テキサス州、米ニューヨーク州の経済規模をも下回り
ます。

 

 国際金融協会(IIF)は2022年のロシア経済の成長率をマイナス15
%とし、ロシアの経済はウクライナ侵攻への代償として課せられた制裁措置に
より急激に悪化すると予想しています。

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弾道ミサイル

 昨日は北朝鮮が弾道ミサイルを発射。排他的経済水域(EEZ)内である青
森県龍飛岬の西約170kmに落下したと言います。

 

 今年に入って恐らく10回目のミサイル発射となります。岸田首相は、(1
)情報収集・分析に全力を挙げ、国民に対し迅速・的確に情報を提供、(2)
航空機・船舶などの安全確認を徹底、(3)不測の事態に備え、万全の態勢を
とる・・・3点を指示しています。

 

 ミサイル発射の度にこうした指示が出される訳ですが、何だか釈然としない、
こうした気持ちになる方も多いのではないでしょうか。実際にミサイルが日本
に向けて飛んで来たらどうなるのか、考えたら恐ろしいものがあります。

 

 11回目、そして12回目といったミサイル発射も想定される訳ですが、飛
んで来るミサイルを食い止める方策があるのか否か、逃げる時間があるのか否
か、事前に飛来情報が的確に提供されるのか否か、危険極まりないです。

 

 

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ガソリン価格の上昇

 ウクライナ危機の影響で世界的にガソリン価格の上昇が続いています。
米エネルギー情報局(EIA)の発表によりますと、米国のガソリン小売価
格は3月14日時点で1ガロン(約3.8リットル)あたり4.32ドル(約
508円)となっています。
 4.32ドルはその時点で過去最高値です。
 欧州はさらに高く、3月7日時点のドイツのガソリン小売価格は1ガロンあ
たり8.23ドル(約970円)。
 香港ではさらに高く、1ガロン10.72ドル(約1260円)を記録しています。
 尚、資源エネルギー庁が本日発表した3月22日時点のレギュラーガソリン
の店頭価格(全国平均)は1リットルあたり174.6円と、前週比0.6円
値下りしました。
 11週ぶりの下落ですが、石油元売りに支給している補助金がなければ、実
勢価格は20008年8月につけた過去最高値(185.1円)を大きく上回
って197円に達していたとみられます。
 ちなみに、1リットルあたり174.6円は1ガロンあたり約664円となります。

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春が来た

 暑さ寒さも彼岸まで。昨日の雪と冷たい風は、冬の終わりを告げる天気だったのでしょうか。今日の東京は穏やかな天気で、東京の電力需給逼迫警報も解除され、急に春っぽさが強くなってきました。街をちょっと歩いてみても、まだ花を咲かせていない様々な木々も多くのつぼみを張ってきていて、張る=春が来ています。近くの江戸川公園でも桜も咲き始めました。正真正銘の春です。春は上向き。いい流れに乗っていきたいと思います!

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日本の電源周波数

 ご存じのように日本の電源周波数は、新潟県の糸魚川と静岡県の富士川を結
ぶ線を境にして、50Hz(ヘルツ)と60Hzとに分かれています。

 

 これは明治の頃、関西の電力供給を担っていた大阪電燈が60Hz仕様の米
ゼネラル・エレクトリック(GE)社製発電機を導入したのに対し、関東の電
力供給を担っていた東京電燈が50Hzの独AEG社製発電機を導入したこと
に起因します。

 

 電源周波数が混在していたイギリスやアメリカでは周波数を統一していった
歴史がありますが、2系統が混在し、かつ周波数変換施設で連係しているのは
日本だけです。

 

 昨日のように電力が不足するような場合は電力会社同士で余剰電力を融通し
合う仕組みとなっていますが、東京電力が受電する場合、北海道と本州を結ぶ
連携設備や東京中部間の周波数変換設備の能力の限界がネックとなっており、
設備増強および発電所の整備が急務となっています。

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春の雪

 今、東京では雪が強く降っています。

 「君がため 春の野にいでて 若菜摘む わが衣手に 雪は降りつつ」・・・古今集春歌上巻に収められた、光孝天皇が親王時代に詠んだ9世紀の歌です。あなたのために春の野原に出て若菜を摘んでいると、私の袖には雪が降っています、という美しい情景の歌です。この歌は、百人一首にも収められた有名な歌ですが、その美しい情景だけで人々に愛されてきたのでしょうか?

 この歌には、春の雪が袖に降ってきて寒くても、その寒さをこらえてまで若菜を摘んで捧げた、相手に対する愛情、思いの強さ、そして情景の美しさと相俟った純粋さが表れていて、それが人々の心を惹き付けてきたのでしょう。

 

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電力需給ひっ迫警報

 電力需要を賄えなえずに大規模な停電を引き起こす恐れがあるとして、政府
は初めて東京電力管内と東北電力管内に「電力需給ひっ迫警報」を出しました。

 

 電力需給ひっ迫の理由として以下の3つがあげられています。

 

 1)東北地方で今月16日に発生した地震(最大震度6強)の影響で一部の
   火力発電所の稼働が停止したこと。

 

 2)今冬の厳しい寒さを警戒して古い火力発電所を臨時に稼働させていたも
   のの、その警戒態勢を2月末で解除した(臨時稼働を止めた)こと。

 

 3)本日の気温が想定以上に下がる(暖房需要が増加する)見通しとなった
   こと。

 

 

 本日14時台の東京電力の電力使用率は107%と、データ上は需要実績が
供給を上まる状態となっていますが、全国の電力会社からの融通もあって今の
ところは事なきを得ています。

 

 ちなみに電力需要のピークは、多くの人が外出から戻って暖房をつける17
時頃だそうです。

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MMTとロシア

  MMT=現代貨幣理論って覚えてますか?ちょっと前によく聞いた、税金なんて上げるな、中央銀行がバンバンお金刷って国債を買えばそれでいいじゃん!というアノ論です。

  しかしこのMMTはまやかし、或いはあやかしのようなもので、そんな錬金術がある訳がありません。でも日本に居ると、国の歳出は歳入より全然大きい状況が恒常化していて、その為に国債の大量発行を続けていますが金利は上がってこないので、もしかしたらこれはまやかしではなく本当に機能するのではないか?などと思ってしまったりするのです。

  しかし、今のロシアを見て下さい。欧米が、世界が、ロシアを国際金融システムから切り離して制裁を与えています。それは何故か?ロシアを立ち往かなくさせるためです。経済が回らない、兵器が作れない・調達できない、戦争を続けられなくさせるためです。しかしもしMMTなるものが本当に機能するならば、ロシアがドルを調達できなくする、即ちドル建ての債券発行を出来なくするとか、関係ないでしょう。

  ロシア中央銀行がルーブルを刷り、そのお金でルーブル建てのロシア国債を買い、国はそうして調達したお金で経済を回し、兵器を作ればいいではないですか。そんなこと、夢物語ですよね?そんな話にあやかされてはいけません。私の尊敬する知人の藤巻健史さんも同じことを仰ってます。

  今回のロシア・ウクライナ危機は、資本市場や安全保障という、人類が苦労して作ってきたけれども、その恩恵に与っている現代の人はその大切さと、どうしたら機能するかの要点を忘れがちなのを、まざまざと見えるようにしてくれていると思います。気を付けましょう。

 

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春分三連休

 今日は寒いですね。二十四節気で今は啓蟄ですが、三日後、月曜日は春分です。暑さ寒さも彼岸まで、とも云いますし、まさに今、季節の切り替え時期が目の前に来ているのでしょう。

 そんな中で、本格的な春の中へジャンプするために、今グッと屈んだ、そんな感じでしょうか。ウクライナ情勢にかかわらず、様々なことが今起きています。三連休の先は違う景色であることを信じます。

 「山重水複疑無路 柳暗花明又一村」(さんちょうすいふくみちなきをうたがい りゅうあんかめいまたいっそん)南宋の詩人・陸游の遊山西村の一節です。様々な困難がある中で、努力を続け、苦労を乗り越えた先に、明るい場所がある。いい詩です。そういう三連休にしたいですね!

 

 

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SNSの威力

 今回のウクライナ危機。今までだってグルジア(ジョージア)とか様々なところで同じようなことは起きてきた訳ですが、今回ほど世界の注目を集めている例はないと感じます。日本では特にそれは顕著で、海外ではもっと世界の他の場所でのことにも関心を持っているのが通常ですが、それでも今回は、日本以外の地域においても、やはり注目度が格段に高いと思います。何故でしょう?

 そもそも問題の規模が大きいから。プーチンが核兵器の使用を示唆する発言をしたから。日本に於いては目の前にロシアがいて、領土問題もあるし、対岸の火事とは言い切れないから。色々な理由があるでしょう。しかしひとつ特徴的なのは、ゼレンスキー大統領や大臣が、SNSを使って、全世界に対して広報活動や支援の要請をしていることです。

 個別の企業の名前を出して、ロシア向けのサービスを停止するようにも訴えました。そしてそれが少なからず、いや大きく影響して、各国政府の制裁の決定の前に、民間企業を動かす動力になったりもしました。SNSを使った広い意味での広報力は、とてつもなく大きいことが再認識されたと思います。

 これはもちろん、悪い動機・意図にも利用できる訳で、悪い意図のものを選別するためにも、或いは良い意図のものを今後私たち(自分や我が国)が活用するためにも、このSNS広報のやり方・効果などをしっかりと分析して、今後に活かすことが大切だと思います。

 

 

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犬と猫

 犬と猫が大きく違うところは・・

 

  犬はこう考える・・・

 

   この家の人たちは、餌をくれるし、愛してくれるし、気持ちのいい暖かい
   すみかを提供してくれるし、可愛がってくれるし、よく世話をしてくれる
   ・・・。 この家の人たちは神に違いない!

 

  猫はこう考える・・・

 

   この家の人たちは、餌をくれるし、愛してくれるし、気持ちのいい暖かい
   すみかを提供してくれるし、可愛がってくれるし、よく世話をしてくれる
   ・・・。 自分は神に違いない!

 

 

 大抵の人は犬型か猫型に区別できるといいますが、あなたはどちらでしょうか?

 

 

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核兵器保有国

 ウクライナ情勢から学ぶことが非常に多いですが、そのウクライナは199
1年のソ連崩壊時には多くの核を保有していたそうです。

 

 ところが、当のウクライナ、ロシア、アメリカ、イギリスが1994年12
月に結んだブタペスト覚書で同国が核兵器を放棄する代わりに主権を尊重し、
武力行使や威嚇をしないと約束したそうです。

 

 同国は核を放棄することになる訳ですが、ウクライナから見ますと今回のロ
シアの侵攻により、貴重な核兵器保有国としての立場を放棄して得た主権の保
証がものの見事に踏みにじられたことになります。

 

 米ロ両大国が入って結ばれた合意であり、最も強力な合意のはずです。とこ
ろが、今回のロシアの侵攻ではこの合意は何の意味も持たず、ウクライナ侵略
を米国すら止めることは出来ませんでした。

 

 

 もしかしたら、この事実は北朝鮮にとって特に重い意味を持つ可能性があり
ます。この度、米ロが結んだ合意でさえ簡単に反故にされた現実を見れば、自
分たちは絶対に核を手放してはいけないと考えるのは当然だからです。

 

 ロシアが核兵器の使用をちらつかせ、ウクライナや欧米から譲歩を引き出そ
うとしている現実もあり、北朝鮮に核放棄を迫ることは一層難しくなるのかも
しれません。

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脱炭素

 地球環境や自然環境が適切に保全され、将来の世代が必要とするものを損なうことなく、
現在の世代の要求を満たすような開発が行われている社会、いわゆる「持続可能な社会」
を目指すため、石油や石炭などの化石燃料から脱却する「脱炭素」が叫ばれてきましたが、
ロシアによるウクライナ侵攻で事情が変わりました。
 石油や石炭などの化石エネルギーからの脱却はコストも時間もかかる話で、
それでも世界はその方向に進んでいましたが、ウクライナ危機と対ロ制裁の影
響でロシア産の供給不安から化石燃料の価格が急騰したため、今現在の社会の
持続性が危ぶまれるような事態になり、脱炭素は一端棚上げのような状況になっています。
 特に天然ガスの40%以上、石油の25%以上、石炭の約半分をロシアに依
存す欧州にとって、今は化石かクリーンかの違いよりもロシアに代わるエネル
ギーの調達先の確保が急務となっています。
 こうした状況を背景に米国では天然ガス増産の号令がかかり、コロナ禍によ
る需要減やバイデン政権が打ち出した脱炭素化政策で下火になっていたシェー
ルオイルの生産に追い風が吹き、環境負荷が高いとして利用が減っていた石炭への回帰もおきています。

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国際収支」と「貿易統計」

 財務省は通商関連の統計として「国際収支」と「貿易統計」を発表していま
すが、2つには下記のような違いがあります。

 

 まず「国際収支」は、諸外国との経済取引によって発生したすべての貨幣の
受け払い(所有権が移転した財貨・モノ)を集計したデータとなっています。

 

 輸出の超過は、受け取ったドルを円転する需要が増えるため、為替市場では
円高・ドル安要因となります。反対に輸入超過の場合はドルの支払いが増える
(ドルの需要が増す)ことから、円安・ドル高要因となります。

 

 「貿易統計」も国際収支とよく似たデータですが、貿易統計の計上範囲は関
税境界を通過した貨物(通関実績)であるという点が大きな相違点です。

 

 例えば、日本がアメリカ製の人工衛星を購入し、アメリカで打ち上げる場合、
人工衛星の所有権がアメリカから日本に移転した時点で国際収支統計の貿易収
支に計上されますが、この場合の人工衛星は関税境界を越えないため、貿易統
計には計上されません。

 

 また、貿易統計は速報性に優れ、特に輸出数量指数は景気循環を示す鉱工業
生産指数に対し先行性があることから、鉱工業生産指数の先行指標として位置
づけられています。

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韓国大統領選と日本

 韓国の大統領選、1%未満の僅差で勝敗が決するという結果になりました。アメリカの大統領選も同様ではありましたが、韓国の政治はポピュリズム的な性格が強いので、アメリカ以上に今後の政治が難しいでしょう。反対側の意見を聞かなければ次回の選挙では負けて、そして韓国では多くの例で大統領は反対側に負けて退任後逮捕されてきましたし、一方反対側の意見を聞けば、それこそポピュリズムの最たるもので、それでは何のために選挙をしたのかも分からない。中々悩ましいです。

 日本は、良くも悪くも平和です。しかし平和だからこそ、その恩恵を最大限に実現すべきで、他国に比べれば政治は「決める」ことが出来る筈で、もっと決めるべきことを決めて前進して欲しいと思います。色々な意味で、日本の政治にとって、未来から振り返ると大きな分岐点になる年になる気がします。その点について注目していきたいと思います。

 

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米国のガソリン価格

 原油高を映し、米国のガソリン価格が過去最高値を更新しました。

 

 全米自動車協会が8日に発表した1ガロン(約3.8リットル)あたりのガ
ソリン価格(全米平均)は4.173ドル(約483円)で、リーマンショッ
ク前の08年7月に付けた過去最高値を約14年ぶりに更新しました。

 

 米国のガソリン価格は過去1年で約1.5倍になっており、平均的な家庭で
1カ月間に約90ガロン(約340リットル)のガソリンを消費すると言われ
る車社会の米国では、ガソリンの高騰は直接的に個人消費に響きます。

 

 NYダウはおよそ1年ぶりの安値となっていますが、インフレが景気を冷や
すとの懸念も相場の重石となっています。

 

 原油価格は1バレル200ドルに達するとの予想もある中、エネルギー価格
の動向から目が離せません。

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「侵攻」と「侵略」

 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続く中、3月5日には北朝鮮が日本
海に向けてミサイルを発射。こう書きますと、ミサイルではなく正確には「飛
翔体」ですという言葉が返ってきそうですが、ロシアによる「侵攻」にしまし
ても、侵攻から先日には「侵略」に認定したと政府がコメントしています。

 

 

 「侵攻」と「侵略」。この場に及んでも何だか言葉のお遊びをしているよう
にしか思えて仕方ありませんが、北朝鮮の飛翔体の発射は今年に入って9回目。
政府関係者は、その度に「断じて容認できない、安保理決議にも違反するもの
であり、強く非難する」と北朝鮮に対して大使館ルートを通じて「抗議」した
と毎回ほぼ定型文のようにコメントしています。

 

 

 そしてもう一つ。よく使われるのが「遺憾」という言葉です。9回のミサイ
ル、いや飛翔体の発射からしますと、いずれの言葉に対しても日本の「抗議」
や「遺憾」など相手にもされていないことになります。よく使われる言葉にも
う一つ「強い懸念」もあります。昨日は、中国の国防費の増加に対して官房長
官が「安全保障上の強い懸念」とコメントしています。

 

 

 「抗議」、「遺憾」、そして「懸念」。昨日は「強靱な国家防衛が急務とな
ったこの期に及んで、それができていないことが遺憾」というコメントを目に
しましたが、まさしく遺憾にぴったりの表現に思えてなりません。

 

 

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日本の主体性

 ロシアの暴走はどこで止まるのか?ウクライナが止められるのか?ロシア軍のプーチンに対するクーデターが起きるのか?ロシア国民がプーチンを引きずり下ろすのか?NATOがロシアと闘うのか?アメリカがロシアと闘うのか?中国がロシアを止めるのか?エネルギーはロシアの代わりにどこかが供給してくれるのか?

 等々の声や心配が聞こえてきますが、これら全て、日本はどこにも主語として入っていません。だから日本の株式市場は、より戦地に近く、経済的なダメージを受けやすいところよりも売られているのかも知れません。もっと主体的にアクションを起こさなければいけないと思います。例えば原発再稼働の議論をもっと真剣に時間を意識して始めるとか。他にも一杯あります。

 日本は、私たちは、主体的に何をすべきなのか。世界の国に云われるからではなく、自分たちでどうするか、もっと考えていかねばいけないと思います。

 

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飛 梅

 「東風(こち)吹かば匂ひおこせよ梅の花あるじなしとて春を忘るな」ー拾遺和歌集に収められた菅原道真の歌です。九州太宰府に左遷される道真が、京都の家の梅の花に対して詠んだ歌です。

 東風が吹いたら、梅の花よ、ちゃんと匂いをおこして自分の所に届けてくれよ。主人がいないからと春を忘れるのではないぞ。そしてこの道真を追って、遙か九州まで飛んでいったとされるのが、太宰府天満宮の飛梅です。

 この飛梅の原種は、京都北野天満宮にあり、その飛梅のクローンが組織培養技術で作られ、濃い紅色の花を咲かせたとのこと。現在の飛梅は江戸時代に接ぎ木されたもので、樹齢350年程度であるのに対し、このクローン飛梅は生まれたてです。凄いですねー。技術とロマンと文化。

昨今、心が痛む話が多い中で、たまにはこんなニュースも必要ですね。

 

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物価高

 小麦粉や食用油など原材料価格の高騰を受け食品の値上げが相次いぎ、物価
上昇が進んでいます。

 

 物価を映す金価格の上昇も続いており、国内地金商最大手の田中貴金属工業
が本日公表した金地金1グラムあたりの税込店頭小売価格(国内店頭金価格の
指標)は前日比133円高の7928円と過去最高値を更新しました。

 

 ちなみに店頭買取価格は1グラム7825円でこちらも過去最高値です。

 

 また、資源エネルギー庁が本日発表した今週月曜日時点のレギュラーガソリ
ン店頭価格の全国平均は前週比0.8円高の1リットル172.8円と、8週
連続で値上がりし、2008年9月以来、およそ13年6カ月ぶりの高値を付
けました。※長野、長崎、鹿児島の各県では平均価格が180円を越えていま
す。

 

 ガソリン価格の抑制を狙った補助金は当初上限の5円に達しており、政府は
補助金を段階的に25円まで引き上げる方針で一定の効果は期待できますが、
大元の相場上昇が続くようであれば補助金の効果も限定的となります。

 

 指標となるNY原油(WTI)は昨日終値(1バレル103.41ドル)か
らさらに上伸し、一時2013年年9月以来、およそ8年6カ月ぶりの高値と
なる109ドル台に乗せています。

 

 ちなみにWTIの過去最高値は2008年7月に付けた147.27ドルで
す。

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落語の『落ちの分類』

 落語の落ちは五十音順に
一・考え落ち。ちょっと聞いたのでは意味が分からないが、よく考えるとな
るほどと納得する落ち。、大名道具、「目利違い」など。(レアケースですが、この落ちを「楽屋落ち」と言う場合があります。これは落ちの
意味が分からず、演者が楽屋に引っ込んだ頃にやっと分かる、と言う事です
が、現在では「楽屋落ち」とは、楽屋でしか受けない、関係者にしか分からない話を指します)
二・逆さ落ち。物事が奇妙な逆さまの結果になる落ち。淀の鯉、駐車病、手飼いの犬、間男五両など。
三・仕草落ち。仕草(動作)で見せる落ち。能狂言の他、だいぶ前
にお届けした、死神1、狸賽(たぬさい)など。
四・地口落ち。地口(洒落・語呂合わせ)で落とすもの。間抜け落ちに次い
で多い。あべこべ夫婦、鶯のほろ酔、カラオケ病院など。

五・仕込み落ち。噺本題に落ちにつながる予備知識を仕込んでおくもの。い
つ受けるの他、化け猫、提灯屋松竹梅など。
六・途端落ち。予想も出来ない一言で全体の結末をつけるもの。もう半分、三枚起証、寝床など。
七・はしご落ち。はしごを登るように順番を経て落ちるもの。一目あがり、祭礼の日にちなど。
八・拍子落ち(とんとん落ちとも)。落ちになる一つの事象をいろいろ見方
を変えてとんとんと運び、切って落としたように落ちるもの。坊主
茶屋の他、だいぶ前にお届けした、しの字嫌い、道具屋・下の鉄砲落ちなど。

九・ぶっつけ落ち。相手の言う事を別の意味に取って落ちるもの。オラが火
事、一つ穴、祇園祭など。
十・間抜け落ち。常識はずれな、間抜けな落ち。一番数が多いと思われる。
喧嘩長屋、浪曲社長、化け物チーム、地獄の学校など。
十一・まわり落ち。回り回って、元に戻る落ち。多くの解説書によると、こ
の落ちは猫の名前しか例がない、とされています。しかし、私の
解釈では、夢金も、お届けした演出にすれば立派なまわり落ちだ
と思います。私の解釈に従えば、他に天狗裁き。さらに、立川志の
輔師作の新作落語「緑の窓口」も、私の解釈に従えば、回り落ち。
十二・見立て落ち。物や状態を別の物や状態に見立てる落ち。薬缶なめ、汽車の白浪、蚊いくさなど。

 私はこの十二種類の落ちの他に、独自に「地(じ)落ち」と言う分類を加
えています。これは特に落ちのようなものが無く、演者の地(ナレーション)
の解説で終わりとするもので、たとえば、遠山政談・下などのようなエンディングのものです。

 しかし、この様に落ちを分類しても意味があるのでしょうか?この落ちの
分類の是非については、毎回、書きますけど、ごく少数の例外を除き、落語
の落ちは落語によって全部違う台詞です。と言う事は、落語の数だけ落ちが
ある、と言っても過言ではないと思います。また、落ちによっては、複数の
落ちを兼ねるものもあるし、一つの落ちが、書籍や解説者によって違う落ち
に分類されていたりします。無理矢理分類する必要はないのでは?私はあえ
て分類するなら、良い落ちと悪い落ちの二通りで良いんじゃない?と思っています。

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プーチン

 ひとりの人間が出来ることには限界があるとも云えるが、同時にひとりの人間が惹き起こすことには限界がないとも云える。今回のウクライナ危機を見ていると、正にそう感じます。プーチンひとりの力はオートバイ一台よりも小さく、工作用機械と喧嘩すれば一瞬でやられてしまうでしょうが、一方でプーチンひとりのせいで、世界中が混乱に突き落とされるかも知れません。

 傍目から見ると、プーチンは強迫観念に苛まれ、文字通り狂気になっていて、暴走しているように見えます。しかしそれを、近くにいる人が誰も止められない。報道を聞いていると、プーチンはコロナ禍が始まって以来ほとんど人と会っておらず、極々側近の部下だけと話しているとのこと。今から考えるとそれが問題ですね。世界有数の軍事力と、何よりも世界最多の核兵器を持っている国の独裁者と、西側諸国は2年間もほぼ没交渉であったこと、それが問題です。

 2014年、ロシアによるクリミア併合。様々な問題が生まれ始めたこの時、G8はロシアを排除してG7に戻しました。これが果たして正解だったのか。地球最大級の破壊力を持つ国の独裁者を、常に世界の文脈にさらして、平行線であろうと、或いは激しい意見のぶつけ合いであろうと、コミュニケーションを取り続けるべきだったのでないか。振り返って考えると、そんな風にも思えます。今はもうすべてが手遅れなのか。

 いや、そうではなく、最後まで対話をしようと努力し続けることが、きっと何か出口を見いだすことに繋がるのではないでしょうか。解決はしない。満足も出来ない。バランスの取れた不満を見いだすしかないのでしょう。

 

 

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国は物語が作る

 「サピエンス全史」のハラリ氏の書いた「プーチンが歴史的敗北に向かって突き進んでいるように見える」という(Why Vladimir Putin has already lost this war:英 The Guardianの)記事が、中々心に染み入ります。

 (前略)国というものは、突き詰めて言うと、物語の上に築かれるものだ。(Nations are ultimately built on
stories.)(略)大統領が首都から逃げ出すのを拒み、米国に対して必要なのは弾薬であり(避難のための)乗り物ではないと言った物語がある。(略)道に座ってロシアの戦車を止めた民間人たちの物語もある。国を作り上げるのはこうした物語の数々だ。長期的にはこうした物語のほうが戦車よりも重みを持つのだ。(後略)ー

 こうも書いていますーThere is no point to remain just observers. It’s time tostand up and be counted.ー我々は傍観者であってはいけない。ーこれは対岸の火事ではないのだと思います。今、プーチンのこの動きを止められなければ、同じような悲劇が世界の違う場所でも起きるかも知れない。私たちの住む日本やその近くでも。何をすべきか、真剣に考えたいと思います。

 さて、今日は雛祭り、上巳(じょうし)の節供もしくは桃の節供です。陽数(奇数)の重なる日は節供、お祓いをする日です。薬草である蓬(よもぎ)餅を食べ、大祓(おおはらえ)のように人形(ひとがた)を流して、清めて、穢れを流す日です。今晩はウクライナを想い、邪悪なものが流れるように私なりにお祓いをしたいと思います。(注:これが、「何をすべきか」の答えではありません。暦に沿ったことはしようという意です。)

 

 

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帝政ロシア

 バイデン米大統領は今日の一般教書演説で、プーチン露大統領を独裁者と呼
び、「自由は専制主義に常に勝つ」と強調しました。

 

 ちなみに専制主義とは、強大な政治権力を持った支配者が独断的に行う政治
体制のことで、もちろんバイデン米大統領が言った専制主義とは現在のロシア
を指します。

 

 ところで、200年ほど前、日本と戦った頃のロシアは皇帝(ツァーリ)の
ニコライ2世が絶対君主として君臨する専制国家でした。

 

 日本と帝政ロシアが戦争に突入する前、ニコライ2世は「わがロシア帝国と
日本との戦争は有り得ない。なぜなら朕がそれを欲しないから」と言ったとさ
れます。

 

 専制国家では、統治者が絶対的な権力を持つ故に、その周りは聞こえの良い
ことばかりを言う側近で占められ、批判意見を認めず、冷静かつ客観的な情勢
分析は必要とされません。

 

 ニコライ2世の発言には、日本側の戦力や能力、士気などを考慮した形跡が
なく、何事も意のままである身辺の状況と国際情勢を同一視しています。

 

 独裁者が「英雄的自己肥大の妄想をもつとき、何人といえどもそれにブレー
キをかけることができない。制度上の制御装置をもたない」のが専制国家の特
徴で、司馬遼太郎はその著書「坂の上の雲」で、日露が開戦した際、ロシアは
「専制国家」であるというただ一つの理由のみで、当時のセオドア・ルーズベ
ルト米大統領は日本の勝利を予想したと書いています。

 

 また、日露開戦後のロシア国内で、労働者の生活向上と日露戦争の中止を求
めて大勢の民衆が皇宮へ向けてデモ行進しました。それに対し軍隊が動員され、
非武装の民衆に発砲、数千人が死傷したとされます。

 

 「血の日曜日事件」として歴史に刻まれた弾圧で、この事をきっかけに民衆
の心は皇帝から離れ、帝政ロシアは内部からも弱体化してゆきます。

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戦 争

 ロシアに対する金融制裁がどれだけ速くてかつ効果的であるか、ドル建てで見たロシアのGDPを一瞬にして半分にし、かつ世界との交易を極めて難しくし、国内での物不足と強烈なインフレを惹き起こす。これは普通の経済制裁より遙かに大きい攻撃であり、通常の兵器による攻撃よりも或る意味でダメージは大きいかも知れません。これは、既に或る意味で、欧米諸国とロシアの間で交戦状態に入ったようなものかも知れません。

 プーチンはこれら制裁に反応して、核ミサイル部隊と北部および太平洋艦隊の戦闘態勢の強化を命令したと報じられていますが、これだけを聞くと気が狂ったか、と思われますが、既に事実上の交戦状態にある、現代に於ける新しい形の戦争が既に始まったと考えると、少なくともその思考回路は分かる気がします。困るのは、今のロシアに欧米諸国等と張り合える手段が、核兵器しかないというのが、本当に厄介です。

 一方で、ロシアは気化爆弾(サーモバリック爆弾)を使用したという報道もあり、それは流石に欧米の堪忍袋の緒が切れた、とも考えられます。今世界で起きていることは、有事です。日本は何をすべきなのか、自分は何をすべきなのか、冷静に、真剣に、考えねばいけないと思います。こんな日が来るとは思っていませんでしたが、現実から目を逸らしてはいけませんね。

 

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金融という安全保障

 この週末に、いくつかの大きな出来事がありました。ロシアに対する金融制裁です。経済制裁ではありません。金融という狭い分野での、しかしその性格上速くて、そして今回は深い制裁です。

 ひとつはSWIFT(スイフト)に於けるロシアのいくつかの銀行との決済を止めること。SWIFTとは、いわば国際的な手形交換所みたいな所で、例えばロシアからイタリアに天然ガスが売られたら、イタリアはその購入代金(通常はドル)をコルレス銀行と呼ばれるイタリアの元締め銀行を通してSWIFTに持ち込み、代金を受け取るべきロシアの銀行は彼らのコルレス銀行を通してこの代金をSWIFTを通じで受け取る。SWIFTに於けるイタリアのコルレス銀行のドル残高を下げて、ロシアのコルレス銀行のドル残高を上げる、これを「決済」という訳ですが、これが止められることになりました。要はロシアと外国の間で貿易をした時に、お金の決済が出来なくなるのです。これはSWIFTでロシアの銀行の決済停止すれば一瞬で完結する。どんな経済政策よりも速くて深いと云えるでしょう。

 もうひとつはロシアの中央銀行の外貨準備(これはドルをFRBに、ユーロをECBに預けている訳ですが)に対するアクセスを制限すること。これはルーブルが売られ過ぎて対ドルでルーブル介入をしようとしても、ドルが動かせないので無力になります。これらの措置は、ロシア国内での物不足とルーブルの下落を促しますが、このような手段は、今までになんども軍事的緊張があってもやらなかったことなので、新機軸です。現代に於ける戦争とはこういうことなのかも知れません。

 ロシアはGDPの世界に占めるシェアは 1.7%程度ですが、これらの措置でロシアのドル建てで見た経済規模は随分小さくなって、今の時点では既に 1%を切っているのではないでしょうか。こうしてロシアを十分に小さくすることがアメリカの狙いかも知れません。翻って考えるに、金融とは国家にとって大変重大な安全保障だということです。

 本はもっともっと経済を強くして、大きくして、世界から見て放っておけないだけの大きさを維持すべきで、かつ金融と資本市場を大きくして、強靱にして、国の大きな安全保障とならなければいけないと、そう染み染み思うのでした。

 

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