後に「ミスター円」と呼ばれた榊原英資(えいすけ)氏が財務官だった19
98年4月当時、1ドル=133円台後半で政府は円買い(ドル売り)介入を
実施しました。
最後の円買い介入は1998年6月で、それ以来24年間、円買い介入は実
施されていません。※円売り介入は2011年11月が最後。
今後日本が円買い(ドル売り)介入に動く可能性は否定できませんが、円売
りに比べ円買い介入はハードルが高いと言われます。
為替介入は「為替相場の急激な変動を抑え、その安定化を図ること」を目的
に、財務大臣の権限において実施され、日銀が財務大臣の代理人として、財務
大臣の指示に基づき実施します。
基本的に為替介入はドルに対して行われ、基本的に米国との合意または黙認
の下に行われます。
円売り(ドル買い)介入は、理論的には輪転機を回して円の発行を増やせば、
上限なしで実施可能ですが、円買い(ドル売り)介入には、元手として使える
ドル資金に外貨準備の範囲内という制限があります。
今年5月末時点における日本の外貨準備は約1兆3300億ドルで、為替介
入の資金と考えた場合、それほど大きな額ではありません。
外貨準備のうち約8割は外債で保有されており、そのほとんどは米国債とみ
られます。
円買い介入のためのドル資金は、外貨準備として保有されている米国債を売
却して調達することになりますが、米金利の急上昇など米債券市場にも相応の
影響を及ぼす可能性があることや、米国にとって輸入物価を押し下げるドル高
の方が都合が良いことなどから、円買い(ドル売り)介入に関して米国の理解
を得るのは難しいされます。
米国の理解を得ずに単独で為替介入を実施することも可能ですが、国際的な
協調が見込めないのは当然として、日本の米国債売りで米金融市場が不安定に
なれば日本を含め世界のマーケットにも影響が及ぶのは必至です。
また、介入に限度があることが見透かされ、投機筋の餌食になる恐れがあります。
状況は異なりますが、過去には投機筋(ジョージ・ソロス)のポンド売りに
対し、英国政府・財務省、イングランド銀行(英中央銀行)が通貨防衛のため
にポンド買いで応戦しましたが、ポンド買いの資金が尽き、ついには英国が投
機筋に屈したという事例もあります。
ファンダメンタル的には貿易赤字の拡大が円安要因の一つで、貿易赤字拡大
の構図(資源・エネルギー価格の上昇に伴う支払いの増加)の是正、具体的に
は資源・エネルギー価格の下落(他力)もしくは原発の再稼働(自力)によっ
て円安圧力が緩和されます。
外国人観光客の受け入れの全面再開も円安の歯止めに一定の効果が見込めます。
これらと合わせて日銀が金融引き締めに転じれば円安是正で最大の効果が期
待できますが、すぐに日銀が政策転換する可能性は低く、そうした状況を見越
しての為替相場の動きとなっています。
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